2009.11.05

DESIGN IT! Conference 2009

今年は8月に引き続き、11月にも『 DESIGN IT! 』が開催されることになりました。年2回の開催は初めてですね。今回のテーマは今流行の「クラウド」です。

◆DESIGN IT! Conference 2009
http://www.designit.jp/archives/cat74/

基調講演スピーカーは米GoogleのUXリサーチャとUXデザイナです。それ以外は日本人の講演ですが、結構、芸達者(?)なスピーカーが並んでいます。例えば、D4DRの藤元健太郎さん、エクサの安藤幸央さん、それからソシオメディアの上野学さん等々。

今回の新しい企画として「特別展示」のコーナーがあります。ロビーの一角にちょっとした展示スペースを作って、UXに関連した活動をポスターやパネルで紹介することになっています。私も川口さんと一緒に「アジャイルUCD」をテーマとした展示をする予定なので、会場で見かけたら声をかけてください。

では、DESIGN IT!でお会いしましょう!

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2009.11.01

第3回 UXブッククラブ in IRIYA 参加者募集

人机交互論の著者の樽本です。いつもブログを読んでくださって、ありがとうございます。

UXブッククラブは順調に回数を重ねており、次回で3回目(3冊目)になります。3回目の課題本はキャロリン・スナイダーの『ペーパープロトタイピング』です。課題本選択の理由や主旨はUXブッククラブのサイトに掲載しましたので、興味のある方はご覧ください。
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UXBC Tokyo 参加者募集ページ

この読書会に参加ご希望の方は以下の手順でお知らせください。
※定員に達したので締め切りました。


  1. このエントリーのコメント欄に「ブッククラブ参加希望」と書いて投稿してください。「氏名」と「メールアドレス」の記入を必須に設定していますので、ご記入願います。(なお、投稿は公開されません。)
  2. 次に、UXBC Tokyo 参加者募集ページの「参加希望者リスト」に名前を書いてください。(ページ右端の「Edit」ボタンを押せば編集モードに切り替わります。)
  3. 後ほど、私からコンタクトさせていただきます。
  4. 参加希望が3~4名集まれば、日程調整を始めます。

※定員に達したので締め切りました。

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2009.10.27

利用中心設計

先日、UXブッククラブを開催しました。今回の課題本はラリー・コンスタンチンとルーシー・ロックウッドの『使いやすいソフトウェア(原題:Software for use)』でした。

この本の中で提唱されている設計手法が『利用中心設計(Usage Cetered Design)』です。一般にユーザ中心設計(User Centered Design)がユーザ調査やユーザテストといった「ユーザとの対話」に重点を置いているのに対して、利用中心設計はユースケースやUIの「モデリング」に重点を置いています。

ブッククラブの復習を兼ねて、利用中心設計のプロセスの中核部分をご紹介します。

ユーザ役割モデリング

利用中心設計では、「ユーザ」ではなく「ユーザ役割(user roll)」を定義することから設計を始めます。本の中では「(英文キーボード環境における)記号入力アプレット」を題材に、以下のようなユーザ役割を定義して、その関係性を分析しています。


  • CasualGeneralTyper
  • CasualTranslator
  • CasualMathematician
  • CasualScientist
  • CasualEngineer
  • FancyFontFutzer
  • CasualCoder

20091027_user_roll_map

ユースケースモデリング

個々のユーザ役割からは、そのユーザが行う様々な「タスク=ユースケース(usecase)」を定義できます。


20091027_usecase

記号入力アプレットの例では以下のようなユースケースが定義されました。そして、汎化(generalization)、拡張(extend)、包含(include)などの概念を使って各ユースケース間の関係性を分析します。なお、ここで分析した関係性はUIを設計する際の制約条件になります。


  • insertingSymbol
  • insertingPhrase
  • tryingSymbol
  • translatingSymbols
  • translatingCodes
  • reviewingShortcuts
  • browsingSymbols
  • specifyingSymbolCollection


20091027_usecase_map

コンテンツモデリング

個々のユースケースについて、本質的ユースケース(essential usecase)を作成します。2列の対話形式のシナリオを使って、ユースケースの実行過程を抽象的なレベルで描写します。そして、その実行プロセスを1行ずつ検討してUIの要素(コンテンツ)を、やはり抽象的なレベルで定義します。


20091027_essential_usecase

定義したコンテンツをおおまかに配置してUIの原型を作ります。なお、静的なコンテンツは寒色系(青、グレーなど)、動的なコンテンツは暖色系(赤、オレンジなど)のカードを使うことをラリー・コンスタンチンは提案しています。


20091027_content_model

ビジュアル化

抽象的なUIコンテンツをテキストフィールドやボタンなど具体的なUIコンポーネントに置き換えながら画面をデザインします。ここでは手書きのワイヤーフレームにとどめていますが、本の中では、最終的なビジュアル設計まで行っています。


20091027_wireframe

利用中心設計の強み/弱み

欧米では『利用中心設計』は、カレン・ホルツブラットの『Contextual Design』と並び称される超メジャーな設計手法の1つです。

利用中心設計には以下のような特徴があると思います。


  • 論理的:ユーザ役割からUI設計に到達するまでの過程が論理的で、それを設計者および評価者がトレースできます。つまり「なぜ、そのようなデザインになったのか?」という議論が論理的に行えます。
  • 標準的:ソフトウェア開発の現場ではUMLが標準です。利用中心設計は考え方や表記法が似ているので、ソフトウェア開発者やアーキテクトにも馴染みやすい手法です。
  • 手軽:特別な投資を必要としません。上記の写真でも分かるように、ペン、ポストイット、ホワイトボードがあれば十分です。そして、こういった"アナログ"なアプローチはアジャイル開発の文化と特に相性が良いみたいです。

しかしながら、利用中心設計"だけ"を忠実に実践している実務者はそれほど多くないと思います。

まず、利用中心設計ではユーザ調査が軽視されています。設計者のディスカッションだけでユーザ役割とユースケースを定義するので、ありきたりな要求定義に陥る可能性があります。最悪の場合「間違った製品を正しく作る」という悲しい結果を招くかもしれません。

次に、利用中心設計では分析対象を抽象化した状態で設計を進めるのが原則です。しかし、普通の人間は抽象的な概念だけで思考を発展させることは得意ではありません。実際には、設計者は具体像を頭の片隅に置きながら、あえて抽象的に議論を進めることになるでしょう。ちょっと矛盾した行動です。

また、抽象的モデルから具象化する"変換方法"が提示されていません。抽象的なコンテンツモデルの実装方法は多様です。具体的なUI部品をリストアップして、その中から、最も適したUI部品を選択(他のUI部品との組み合わせも考慮して)できなければ最終的に優れたユーザ体験を実現できません。本の中では、著者が"発明"したUI部品がたくさん出てきますが、その開発プロセスは不明です。

さらに、ユーザビリティ評価手法も物足りません。本の中では独自の「協働ユーザビリティインスペクション」が提唱されていますが、ヒューリスティック評価法や認知的ウォークスルーと比べるとマイナーな手法です。それに最近は、インスペクションよりもRITEメソッドのような軽量なテスト手法が重視されています。

以上のように、利用中心設計にも課題は多くあるように思います。ただ、それらの課題は他の手法と組み合わせれば、おおよそ解決可能です。ユーザ調査に関してはContextual designやペルソナで改善できそうです。ビジュアル化にはデザインパターンが役立つでしょう。評価手法に関しては、やはりヤコブ・ニールセンがオーソリティです。

原書の『Software for use』の発行は1999年です。"ドッグイヤー"と言われるITの世界では、もはや「古典」の部類に入るでしょう。そのため、現在のユーザビリティやUIデザインの実務者には疑問や違和感を感じる箇所が随所にあります。

しかし、利用中心設計の中核部分は色あせることはありません。「文字だけでUIを設計する」――この"革新的"なアプローチは、今後も様々な分野に応用されていくでしょう。

【参考情報】

◆Constantine & Lockwood, Ltd.
http://foruse.com/

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2009.10.16

開けごま!

「開けごま!」は最も有名なパスワードでしょう。ただ、この"個人認証システム"には致命的な欠点があります――パスワードが周囲の人にバレてしまうのです。

現代でもセキュリティとユーザビリティの両立は頭の痛い問題です。従来のIDとパスワードに代わる個人認証手段として音声認識が研究されていますが、「開けごま」と同じ問題――パスワードが漏出する――が懸念されています。それに対する1つの解決策が朝日新聞の小さな記事に出ていました。

小声ではなく、他人には何を言っているのかわからない「つぶやき」を個人認証に役立てようとする研究発表が13日、統計数理研究所(東京都立川市)であった。パスワードをつぶやく声を特殊マイクで拾い、声紋と併せて個人を認識する。指紋よりコピーしにくく、声紋とパスワードで二重のセキュリティが保てるという。

この「つぶやき」を拾う特殊マイクとは「NAM(非可聴つぶやき)マイクロフォン」のことです。数年前にこのブログでも紹介しましたが、「イノベーション・ジャパン2009」に出展された最新版の映像がYouTubeで公開されています。

NAMの開発者である中島淑貴氏は「音声認識の最大の欠点は声を出すことにある」という痛快なパラドクスを提唱しています。そして、従来の音声認識の問題点を3つ挙げています。


  • 外部雑音、騒音環境に弱い
  • 人間の声自体が大きな騒音源となる
  • 第三者に見られると「気恥ずかしい」

NAMはこれらの問題点に対する優れた解決策です。ただ「キラーアプリケーション」が存在しないため商用利用にいたっていません。福祉分野や医療分野での実用化が期待されているようですが、市場の大きい商用利用に結びつかないのは残念なことだと思います。

キーボードのつぶやき(Twitter)は大人気ですが、本当のつぶやきテクノロジーが普及するには、まだ時間がかかりそうです。

【参考情報】

◆奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科音情報処理学講座
http://spalab.naist.jp/

◆中島淑貴氏の博士論文(※サイトが"重い"ので注意)
http://library.naist.jp/mylimedio/dllimedio/show.cgi?bookid=83968

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2009.10.08

マウス 2.0

1961年にダグラス・エンゲルバートがマウスを発明してからほぼ半世紀が経ちました。その間にデザインは洗練され、光学式、ホイールの搭載、無線接続など様々な機能的な改良も加えられましたが、基本的な操作方法――ポイントしてクリックする――には大きな変化はありませんでした。

そんな"枯れた"デバイスですが、マイクロソフトの研究者達は全く新しい発想で21世紀のマウスを開発しようとしています。百聞は一見にしかず――まずは「マルチタッチとマウスの遭遇」というタイトルの以下のビデオをご覧ください。

◆Mouse 2.0: Multi-touch Meets the Mouse
http://www.youtube.com/watch?v=-3PZkpQThek&feature=player_embedded

このビデオでは5種類のプロトタイプが提案されています。

FTIR Mouse
最初に登場するマウスです。FTIR(Frustrated Total Internal Reflection)という現象を利用して、湾曲した透明のアクリル板上のユーザの指の動きをカメラとらえてマルチタッチ操作を実現しています。
Orb Mouse
ドーム状のマウスです。ドーム部分に写るユーザの指の"影"をカメラで検知します。
Cap Mouse
iPhoneなどと同様の静電容量方式タッチセンサ(capacitive touch sensor)技術を使用しています。マウス表面に貼り付けたパッド状のセンサでユーザの指の動きをとらえます。
Side Mouse
マウス前方のテーブル上のユーザの指の動きをカメラでとらえます。指の可動範囲が広く、また「両手操作」も可能です。
Arty Mouse
マウス本体と2本の拡張アームにそれぞれ光学センサがついていて動きを検知します。2本の拡張アームには親指と人差し指を載せて使用します。

テスト結果

研究者達はプロトタイプを作っただけではありません。ちゃんと「ユーザテスト」を実施しています。(被験者6名、思考発話法)

  • 一番評価が高かったのは Arty Mouse でした。光学センサなので操作の検出力が高く、2本のアームはピンチ操作(つまむ操作)が容易です。ただし、現状のデザインでは「2本指」までの操作しか行えないのが難点です。
  • Orb Mouse も評価が高かったようです。ドーム状の形状が、本体を5本の指でつかんで左右に回転させたり、5本の指をドームの上部から下部に向かって動かす操作などを上手く"アフォード"しています。ただし、ちょっと手が疲れるようです。
  • マウス操作とマルチタッチ操作のバランスが良かったのは FTIR Mouse でした。
  • 目新しさという点では Side Mouse がユーザを惹きつけましたが、操作可能エリアが分からずに戸惑ったり、手の大きさによって操作しづらい場合がありました。
  • Cap Mouse は最も「マウスらしい」形をしているので、最初、ユーザはとても親しみを感じたようです。ただし、それがバイアスを与えて従来のマウスと同じ操作方法を想起させてしまい、初見操作時の操作ミスにつながりました。

なお、このテストの本当の目的は、プロトタイプの出来映えに順位をつけることではなく、もっと定性的なフィードバックを得ることです。論文の中でも「どれが一番」という点を強調するのではなく、テストで観察された事象について多く言及しています。

つまり本当の「解」とは、今回提案した5つのプロトタイプの"いずれか"ではなく、それぞれの利点を強化して欠点を補強した(まだ存在しない)"第6番目"のプロトタイプということになるでしょう。

参考情報

◆マウスの父、ダグラス・エンゲルバート氏インタビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0322/engelbart.htm

◆マイクロソフトのマルチタッチマウス "Mouse 2.0"に触ってきた
http://japanese.engadget.com/2009/10/07/microsoft-mouse-2-0/

◆Mouse 2.0: Multi-touch Meets the Mouse(論文)
http://download.microsoft.com/download/4/B/4/4B49C1C2-4C7A-4CEA-ADB5-EF4E4E7F5F63/uist304-m2.pdf

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