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2004.04.05

ユーザビリティ≠使いやすさ

ユーザビリティの訳語として「使いやすさ」がよく使われます。そしてユーザ調査では、製品購入時の重視点として機能、性能、価格などと並んで「使いやすさ」が挙げられているので、もはやユーザビリティの重要性は誰の目にも明らかであると言えそうです。(※参考1)

ただ、ユーザビリティを「使いやすさ」と訳していると、「ユーザに対する思いやり」や「ユーザフレンドリ」といった感性的な概念と混同してしまいます。その結果、設計チームは、ユーザビリティとはユーザにとって『有れば嬉しいけれど、無くても困らない』という“プラスアルファ”の要件であると誤解してしまいます。

実際のプロジェクトでは、設計チームに「コスト」「納期」「品質」の厳格な要件が課せられます。それらの要求水準は非常に高いので、モノ作りの現場は、企画、設計、実装、品質保証、マーケティングが入り乱れた“修羅場”と化します。そんな極限状態に陥ったときに、「ユーザビリティ=使いやすさ」と捉えている設計チームは、ユーザビリティ問題の優先順位を下げてしまいがちです。

しかし、ユーザビリティには本当はもっと重大な意味が含まれています。それは「使える」ことです。もし、製品が“使用不可能”になってしまうとすれば、設計チームは真剣にユーザビリティ問題を解決するでしょう。

ユーザビリティエンジニアが参加していない設計チームは、往々にして深刻なユーザビリティ問題を抱えたインターフェイスを生み出します。完成後にユーザテストを実施して、初めて「使用不可能」であることが明らかになってしまうことは少なくありません。ですから、私はユーザビリティを「使いやすさ」よりも「使用可能性」と訳すべきだと考えています。

使用不可能なインターフェイス

電子商店のショッピングカートの放棄率が高いことは、ウェブ制作者の間ではよく知られています。あなたの両親や祖父母は携帯電話のメールを送信できるでしょうか?(受信はできても、送信できない人は多いのです。)また、家電製品(特にAV機器)の使い勝手の悪さは、様々な媒体でよく取り上げられる話題です。

皆さんはインターネットを利用していて、こんな経験はありませんか?

注文の多い注文フォーム
ある電子商店の注文フォームは20項目の入力フィールドを持つ。さらに、各フィールドの入力規則は厳密に指示されている。「郵便番号は"-"を入れない」「名字と名前の間に全角スペースを入れる」「電話番号は"-"を入れる」「日付は全て2桁(例:09/11)」などなど。。。
おバカな検索エンジン
ある家電メーカーのウェブサイトでは、製品名で検索すると、マスコミ向けのニュースリリースのPDFファイルばかり表示する。なお、アルファベットが含まれた製品名の場合、1文字でも大文字と小文字を間違えると「検索結果0件」になってしまう。
一方通行のサイト
ある金融機関のウェブサイトでは店舗検索専用のミニウィンドウを開く。ところが、そのウィンドウには“戻る”機能を持ったボタンやリンクは用意されていない。ユーザは検索プロセスで何らかのミスを犯すと、最初の画面に戻ってゼロから検索をやり直さなければならない。

ユーザビリティが「使用可能性」に止まっていることは、ユーザビリティエンジニアとインターフェイスデザイナにとって不名誉なことだと思います。同じデザインでも、プロダクトデザイナは安全性や使用可能性を保証した上で、さらに“魅力的”なデザインを目指しているのですから。

ただ、インタラクティブシステムのユーザインターフェイス設計は非常に複雑です。インターフェイスの改善は、著名デザイナを起用して解決できる問題ではなく、「ユーザ中心の設計プロセス」を構築しなければなりません。そして、設計チームの技術を、少なくともインターフェイスが「使用可能」であることを保証できる水準に引き上げることが急務です。

設計チームが「使いやすさ」を目標にするには、まだしばらく時間がかかりそうです。

【参考情報】

(1)U-site:使いやすさ意識調査
http://www.usability.gr.jp/survey/result2.html
商品を購入する際に「使いやすさ」「性能」「機能」「デザイン」「価格」の5つの要素の中で、どの要素が最も影響力を持つかということについて調査しています。

(2)ITPro:家電製品,ユーザー・インタフェースに問題あり
http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/ITPro/OPINION/20020620/1/
HDDビデオ・レコーダーの使い勝手の悪さを指摘しています。解決策として「技術者のユーザーへの思いやり」を挙げていますが、その点には賛成できません。

(3)U-site:なぜ消費者向け製品のユーザ体験はよくないのか
http://www.usability.gr.jp/alertbox/20040315.html
ニールセン博士が、車や家電製品のリモコンを題材に、消費者向け製品のユーザビリティ問題発生の原因を考察しています。

(4)使いやすさ研究所:使いやすさ日記
http://usability.novas.co.jp/diary/00.html
様々な製品、施設、案内標識などの使いやすい点、使いにくい点などを写真付きでレポートしています。「×」が使いにくいモノです。

(5)Internet.com:ネットビジネスの成否を決めるショッピングカート問題
http://japan.internet.com/wmnews/20010810/1.html

(6)Internet Watch:ショッピングカートを途中で放棄する人が67.1%
http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/12/09/1415.html

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