エスノグラファーが登場する映画
この映画の監督は、スウェーデンの家庭研究所が実際に調査した“台所動線図”を見てストーリーを思いついたそうです。
◆キッチン・ストーリー
http://corebooth.com/main/movie/ks/ks.html
1950年代初頭。ノルウェーの田舎に住むひとり暮らしの老人のもとへスウェーデンの「家庭研究所」から中年の調査員がやってくる。調査員の目的は"単独男性の台所での行動"を調べること。台所の隅に奇妙な監視台が置かれ、調査が始まる。ふたりの間には、「お互い会話してはならない」「いかなる交流ももってはならない」というルールがあったが、時とともに少しずつ生活に変化が生まれる・・・。<公式ウェブサイトより引用>
この映画は単なるフィクションですが、敢えて専門的に解釈すれば、これは調査員と被験者の「ラポール(信頼関係)」に問題があったと言えます。
ラポール構築を疎かにすると、被験者はどうしても警戒してしまって何も見せてくれません。この映画でも、調査員が「監視台」から降りて被験者と会話するようになって、初めて被験者の行動が理解できるようになる場面が出てきます。ただ、彼はその後、人間関係に深入りしすぎて研究が台無しになってしまいますが。。。
エスノグラフィというのはドキュメンタリー映画の制作に似ています。例えば、犯罪組織を取材する場合、ディレクタが組織の一員になる訳ではありません。ディレクタは対象と一定の距離を保ちながら、長期間にわたって取材を続けます。エスノグラフィでも研究者は対象の中に飛び込みますが、決して同化してはいけません。
コンテキスト調査やユーザテストにおける人間関係の基本ガイドラインは以下の通りです。
- 研究への参加を無理強いしない
- まず被験者と普通の人間関係を構築する(観察者が「敵ではない」ことを理解してもらう)
- お互いのプライバシーには深入りしない(通常、“身の上話”は不要)
- 被験者に“被験者感覚”を持たせない(観察者と被験者は対等)
被験者を1人の人間としてではなく、データを採取するための実験材料として扱うようなアプローチには研究者からも疑問の声が挙がっています。そういった反省から、質的な研究を行う研究者は「被験者」ではなく「研究参加者」という言葉を使うようになっています。
【参考情報】
(1)Bunkamura ル・シネマ(東京・渋谷)
http://www.bunkamura.co.jp/cinema/index.html
キッチン・ストーリーを上映中です。
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