"ユーザービリティ"の怪
今回のタイトルを見て「あれ?」と思った人は"正解"です。何とも思わなかった人は、コラムの内容をよく読んでみてください。
ユーザ派 vs. ユーザー派
外国語を日本語で表記する場合、様々な問題が起きます。その中でも悩ましいのは、カタカナ用語の長音表記です。
- ユーザ
- ユーザー
- ユーザエクスペリエンス
- ユーザーエクスペリエンス
- ユーザテスト
- ユーザーテスト
工学系の教育を受けた人は「ユーザ」派が多いと思いますが、新聞や教科書など、一般的には「ユーザー」が多く用いられています。その論争は、なかなか収束しそうにありませんが、私たちユーザビリティ業界で多用する「user interface」の場合はもっと厄介なことになっています。
- ユーザインタフェース
- ユーザインターフェース
- ユーザインターフェイス
- ユーザーインタフェース
- ユーザーインターフェース
- ユーザーインターフェイス
原語の「user」と「interface」をどのように表記するかによって、6種類ものバリエーションが生まれてしまっています。公的なガイドラインはあるのですが、上記6種類はいずれも"間違い"とは言えません。どの表記を使うのかは、執筆者の"主義・主張"によるのです。(ちなみに私は上から3番目の「ユーザインターフェイス」派です。)
では「usability」の場合はどうでしょうか?
- ユーザビリティ
- ユーザビリティー
- ユーザービリティ
「ユーザビリティ」と「ユーザビリティー」はどちらも正解ですが、3番目の「ユーザービリティ」は間違いです。それは、原語の綴りを見れば明白です――「userbility」ではなく「usability」なのですから。
失敗のメカニズム
しかし、ネット上や紙面で実際に「ユーザービリティ」は使われています。なぜ、間違いが通用しているのでしょうか?
私の体験に基づくと、その発生ロジックは以下の通りです。
- 工学系の筆者は「user」を「ユーザ」と表記する傾向がある。
- ところが出版社の編集ガイドラインでは「ユーザー」と長音表記することになっていることが多い。
- そこで編集者は原稿に対して「ユーザ=ユーザー」という"一括変換"をかける。
- その結果「ユーザービリティ」という誤表記が生まれる。
「ユーザービリティ」は編集者によるケアレスミスなのです。決して「ユーザ vs. ユーザー」のような執筆者の"主義・主張"の問題ではありません。
ところが、そのミスを再利用してしまうロジックが、さらにあるのです。それは、「ユーザビリティの語源は"user"である」という思い込みです。
人間のユーザーに関する特性だから、ユーザーに接尾語を付けて「ユーザービリティ」である――それなりに理屈が成り立っているように見えますが、残念ながら「usability」の本当の語源は「user(使用者)」ではありません。「use(使う)」です。
use(使う) + able(できる) = usable(使用できる)= usability(使用可能性)
つまり、ユーザビリティとはヒトではなくモノに関する特性なのです。ユーザビリティはモノに中に存在する(作り込む)特性です。だから、私たちユーザビリティエンジニアが扱っているのは、人間ではなく、製品のユーザインターフェイスなのです。
【参考情報】
◆マイクロソフト製品ならびにサービスにおける外来語カタカナ用語末尾の長音表記の変更について
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3491
◆TC協会:外来語(カタカナ)表記ガイドライン(第2版)
http://www.jtca.org/ai_collaboration/katakana_wg/index.html
◆HCD重要用語のカタカナ表記 ガイドライン
http://www.hcdnet.org/hcd/column/katakana.php
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